悪魔と狐の物語

空想歴史小説ファンタジーです。人の歴史を見つめ続けた神狐と大悪魔の物語。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

妹狐の物語10

初夏の旅は途中までは何と言う事も無く過ぎた。 船は中海を超えて、砂浜の続く因幡の国をすいすいと通過して行く。 途中、現在の鳥取県の倉吉町に寄って、船を点検する。足りなくなった真水は青谷と言う場所の船着き場近くの岩場で補充した。 その後は現在の…

妹狐の物語9

私達は須佐を出発する。 母はその直前まで、貰った絹の反物を切って、それに細かく刺繍を行っていた。 母の作った被り物と肩掛けは、花柄で美しく刺繍されていた。 それを受け取った村長の妻は、村の娘の花嫁衣裳として使うと言って涙ぐんでいた。 薬師の家…

妹狐の物語8

その頃の私の外見は、大体6歳から7歳位の外見だった。 手足は細く長く、大体1000年以上先の外見であったと思う。 この頃の私は、自分で言うのも何だが、可愛い盛りで、既に12歳、当時の結婚可能な年齢に達している姉とはまた違う意味で人目を引いた…

妹狐の物語7

春が来た。正月(現在の2月)以降は大雪も降らなくなったが、私達はそれでも雪に閉じ込められながら、ひたすら備蓄していた食糧で食いつないでいた。 実際、本性を現して、狐の姿になれば山の中できちんと獲物は見つかるのだが、それは最後の手段である。 …

妹狐の物語6

私達は、こんな降ってわいた様な災難に見舞われながらも、何とか出雲に辿り着いた。 出雲の国は、当時は製鉄をほとんど独占していた。 製鉄と言っても、その鉄はほとんど武器だったのだが。 九州で発生した古代の神道、それがアマテルを頭にした宗教勢力だっ…

妹狐の物語5

巡邏の兵隊、5人程の分隊が私達の家族を呼び止めた。 今は交代したばかりの兵隊が任那駐屯の日本軍には多くなっている。 季節はまたしても秋。ここに定住しようとする兵隊以外は、毎年少しずつ入れ替わって行く。冬の季節、現在の11月から2月を除いて、…